いつもそばにいる、家族のような存在の“もち”。

 

多彩なもち食文化が根付いている岩手県一関市。

お雑煮や焼き餅など正月シーズンだけ食卓に並べられるもちが、ここ、一関ではごく当たり前に、日々のさまざまな節目において登場します。

たとえば冠婚葬祭や季節の変わり目、農作業の区切りなど。
そのたびに一関では思いを込めてもちをつく……。
もちは人々の暮らしや人と人とのつながりに寄り添ってきたのです。

一関の原風景。

一関のもち食文化は、今から約400年前、伊達藩がこの地を治めていた時代に始まります。

毎月1日と15日、もちをついて神様に供え、平安無事と豊作を祈る風習がありました。

この時、農民たちが口にするのは、殼ばかりで実のない「しいな米」に雑穀を混ぜた「しいなもち」。精米からできた白いもちは神様に献上していたのです。

そこで、しいなもちをおいしく食べるためにおかずを和えるなどして創意工夫し、これが独自のもち食文化に発展していきました。

今では食べ方は300以上にもおよび、人々の生活に根ざしたものとなっています。

一関の由緒正しいもち本膳料理で、心までまんぷくに。

 

もち食文化の多彩さを栄えたといわれる、一関市・花泉町。

そこには築200年以上にもなる古民家で、伝統的なもちの本膳料理を振る舞う農家レストラン〈夢みる老止の館〉がありました。

旅するモデル・斉藤アリスが、一関でもちをめぐる旅へ。広大な庭は、春先になるとツツジが美しく咲き誇るという。

ここでは自家精米でつくったつきたてのもちがバリエーション豊かにアレンジされ、あつあつのうちにいただくことができます。

もち食文化を伝承する佐々木さん。

手際良く作るのは同店女将の佐々木善子さん。

「焼かずにつきたてのもちを食べる機会ってそうないでしょう。切り餅とは段違いにおいしい。それに、ごはんのおかずになるものは、もちと絡めても大抵おいしいんですよ。」

つきたてのもちを手に取り、人差し指と親指で作った輪から、にゅるんともちを押し出してちぎります。見ているこちらも気持ちが良い工程。

もち本膳。右上から時計回りに、擦ったごぼうの香り立つ「ふすべもち」、心温まる「おつゆ」、たっぷりこしあんをかけた「あんこもち」、沼えびをまぶした「えびもち」、麦芽の甘いたれに和えた「あめもち」。中央には口直しのなますとたくあんが。

完成したのがこちら。
明治期の器に色とりどりのもちが盛り付けられています。

本膳は正しい食べ順が。

まずはあんこもちをいただき、食べ終えたらなますで口直し。
次にえびもちをいただき、これも食べ終えたらなます……と、あんこもちを起点になますを挟みながら、時計回りでもちを平らげていきましょう。

食感がユニークなえびもち。

こちらがえびもち。かつて水源が乏しかったこの地域では、溜池を作り、そこから水を引いてもち米を育てていました。その溜池に生息するのが、この沼えび。

小ぶりながらも、ぷりぷりふっくらした身で、しっかりとした甘みを感じます。
サクッ、もちっとした歯ごたえのハーモニーも楽しい。人気のもちのひとつです。

あめもちにはきな粉のアクセントを。

あめもちとは、大麦を粉にして煮出した「麦芽糖」ともちを和えたもの。とろとろのシロップは、ほのかに麦芽の香ばしさが広がります。

ハチミツでもみたらしでもない、あっさりとした甘みとコクを感じる一品です。

もちを頬張る幸せ。つきたてのもちはとにかくよく伸びる。

ひとつの椀にもちが2つずつ入っているというボリューム感。食べ終わる頃には、すっかりまんぷくに。

〈夢みる老止の館〉
一関市花泉町油島字上柏木39
営業時間 11:30~20:30
電話番号 0191-82-2722(予約制)
年中無休
※必ず3日前までに予約。

 

一関散歩の小休憩に。創業明治36年の老舗和菓子店〈松栄堂〉

 

“しっかりごはん”としてのもち以外にも、おやつとしてのもちも味わいたい。

こちらはお店裏。のれんをくぐると、手入れの行き届いた上品な日本庭園がお出迎え。

一関市・地主町にある、創業明治36年の老舗和菓子店〈松栄堂〉では、甘味もちをいただけます。

「ずんだもち」(税込693円)

自然な甘さと枝豆の風味がマッチしたずんだもち。
つぶつぶとした舌触りもくせになること請け合いです。

季節限定「ごまもち」(税込550円)。豆菓子とほうじ茶が箸休めに。

黒ごまを擦ってしょう油や砂糖と和えた濃厚なあんの中に、ひと口サイズのもちが5つ隠れています。きな粉をかけていただきましょう。

口当たりなめらかなので、もちとの一体感を感じる一品。
どこまでも真っ黒なあん、お歯黒を楽しみながら食べるのが醍醐味です。

岩手の銘菓「ごま摺り団子」(8個入=税込648円)

ごまもちがお気に召したら、しっとりした小粒の団子の中にごま蜜がたっぷり入った「ごま摺り団子」をお土産に。

かじるとごま蜜が弾け飛ぶ恐れがあるので、ひと口でいただきましょう。

庭園を眺めながらホッと一息。楽しいティータイムを。

松栄堂のもちはひと口で食べられるので、ぜひのどごしを楽しんでみてください。

また、店内は電源・wi-fiがあるので、休憩しながらスマホを充電することも可能。旅にありがちな充電切れも、ここに立ち寄れば防げそうです。

〈松栄堂 総本店〉
岩手県一関市地主町3-36
営業時間 8:30〜18:00(月〜土)/9:00〜18:00(日)
電話番号 0191-23-5008
年中無休

 

 

 

 

 

 

 

 

いろんなもちを少しずつ。ドライブの休憩に立ち寄りたい道の駅〈厳美渓〉

 

エメラルドグリーンに輝く水面と、悠久の時を経て磨かれた岩が美しい渓谷〈厳美渓〉。

岩手の名所のひとつである〈厳美渓〉を目指してドライブ。

その道中に立ち寄りたいのが道の駅〈厳美渓〉。
道の駅内の産地直送販売コーナーに併設された、もちレストラン〈ペッタンくん〉で小休憩をとりましょう。

こちらが産地直送販売コーナー。

とれたての新鮮野菜や果物など、地元の食材が並びます。
こちらでは産直の食材を使ったもち料理をいただけます。

「いちご大福」(税込210円)

目を見張る大きさのいちご大福。このいちごも、ここの産直のもの。

もちろん、もちもこのレストラン内の工房でついたもちです。
その時々の旬の素材で作るので、大福の中身は来た時のお楽しみ。

「和風もちセット」(税込1,000円)

レストランでいただくのは、一関産のもち米「コガネモチ」を100%使用した「和風もちセット」。

ひとつ30g程度の小ぶりなもちが8種類並びます。いろんな種類を少しずつ食べられるのが嬉しい。

中央にあるのは大根おろし。口直しだけでなく、消化を助けるといいます。

食べているのは、春を感じる菜花を和えたもち。

やわらかいのにコシがあり、とにかくよく伸びる!

お土産としてお持ち帰りもあるので、ドライブのお供にいかがですか。

〈道の駅 厳美渓 レストランペッタンくん〉
岩手県一関市厳美町字沖野々220-1
営業時間 10:30~17:00(16:00LO)
電話番号 0191-29-2000
11月~2月の第3水曜日、3月~10月は無休

 

 

おつまみとしてもちをいただく。〈居酒屋 こまつ〉

 

一関のもちは、なんとお酒にも合うのです。
夜は地元の人で賑わう名店〈居酒屋 こまつ〉で、もちをつまみに一杯いきましょう。

「ふわmochiメンチ」(1個=400円)

こちらで頼んでおきたいのが「ふわmochiメンチ」。

厚みのあるメンチカツの中に、ダイス状にカットされたもちが入っており、サクサクもちもちジューシーな味わいです。

ソースをかけなくても、濃厚な肉汁だけで十分いただけます。

「もちの油揚げ包み焼き」(400円)

こちらはだしを吸ってしっとりとした油揚げの中に、とろとろのもちが入った一品。
甘じょっぱい味がお酒を誘います。

もち米から作った「純米酒 結」。限定販売のため2020年分はすでに完売。2021年以降は好評につき生産量を増やす予定だそう。

一関産のもち米「コガネモチ」100%の日本酒と一緒にいただきます。

日本酒特有のツンとした酸味やあと引く甘さがなく、華やかでフルーティー。

日本酒ビギナーでもグイグイ飲めてしまいそうなほど、さっぱりとした甘さとなめらかな口当たりです。

お酒の席でつまむもちも絶品。

もちづくしの一関。
朝から晩まで、心ゆくままに楽しめそうです。

〈居酒屋 こまつ〉
岩手県一関市大町6-20
営業時間 17:00〜22:00(フード21:00LO、ドリンク21:30LO)
電話番号 0191-23-5744
日曜・祝日休

 

ひと口もちを頬張れば、その食感に心がやわらいでいく。伸びやかな気持ちになっていく。
一関のもち食文化に触れる旅は、癒しの旅でした。

PAGE TOP