-
岩手県南部の一関・平泉地域は、東北地方の中でも比較的気候が温暖で米作りに適しています。
北上川(きたかみがわ)下流地域の広大な平地では、もち米が作られていました。
農産物や山菜、沿岸地域から運ばれる新鮮な海産物など豊かな食材を活かした多彩なもち料理が伝わっています。
-
戦中、戦後の人々の暮らしはとても貧しく、もち米は大変貴重な食べ物でした。
そこでくず米を粉にして練り、雑穀と混ぜ合わせた「しいなもち」を作って食べていました。
そのような中でも、暮らしと生活の知恵で、数多くのもち料理が生まれ、季節ごとに地元の食材を使った郷土料理として今に伝わりました。
-
また一関・平泉のもちには人々の暮らしや、田植えあとの「さなぶりもち」や刈り上げを終えた「刈り上げもち」など、神や自然の恵みへの感謝の形として、もちをつき、集まった人へ振舞っていました。
今でも儀礼食として受け継がれている「もち本膳」は冠婚葬祭のおもてなし膳です。
昔ながらの結婚式では、嫁入りの行列を迎えるもちつきがにぎやかに行われています。お嫁さんが実家から持ってきたもちを、ご近所に配る「まわしもち」という風習もあり、もちが人と人の心をつないできました。
-
現在も、地域行事や商店街イベントなど多くの場で親しまれいます。
一関・平泉地域におけるもち食は、食文化や祭礼などの側面だけでなく、交流ツールとして受け継がれています。